理論と実験の間で大きく食い違い、長年問題となってきたΓn/Γpの謎解決! | |
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一般的に、原子核は陽子と中性子(核子)のみから出来ています。
自然界には存在しない原子核として、Λ粒子を持つ原子核(ハイパー核)が人為的に
つくり出され研究されて来ました。
Λ粒子は3つのクォークからなりますが、
その一つがストレンジクォーク(sクォーク)と呼ばれるもので、
u、dクォークから成る陽子や中性子とは異なり、
弱い相互作用を通じて崩壊し、真空中では
のように、π中間子を放出して崩壊します。 原子核中のΛは、比較的軽い原子核では、 真空と同じように崩壊しますが、 核が重くなるに従い次のような原子核特有の崩壊が多くなります。 これがハイパー核の非中間子弱崩壊と呼ばれる過程です。
前者の崩壊強度がΓn、後者のものがΓpと呼ばれ、 その比Γn/Γpが理論と実験で大きく喰い違うことが、 長年問題となってきました。 この反応は、次のようにいくつかの方法で理解されますが、 いずれも、弱い相互作用を必ず含みます。 ですから、強い相互作用が圧倒的に物事を支配する原子核内で、 弱い相互作用がどのように働いているかを理解する上で重要と成ります。
特に、(c)のクォーク直接反応(DQ model)は、通常は見ることのできない 核内バリオン間のクォーク組み替え反応を含むので、 このような反応があるかどうかは、極めて面白い研究対象です。 このハイパー核非中間子弱崩壊では、 崩壊で2つの核子(陽子・中性子)が放出されるます。 しかし、これまでの非中間子弱崩壊の実験的研究では、 一つの核子しか捕らえてこなかったために、 理論計算との比較に耐える精度のデータがありませんでした。 そこで、次の図に示すような実験装置を標的(target)周囲に配置することにより、 2つの核子を同時に捕らえ、 ハイパー核非中間子弱崩壊の直接測定に始めて成功しました。
これにより、 これまでのΓn/Γp比の謎が解決されると共に、 Λと核子との相互作用についても重要な情報を得ることが出来ました。