K中間子水素原子の謎の解決! | |
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K中間子と核子の相互作用は謎に包まれていました。
K中間子と陽子の散乱実験では非常に強い引力と考えられるのに、
逆にK中間子と陽子の原子(K中間子水素原子)での測定では
そうではなかったからです。
この二つの実験結果を統一的に理解することが出来なく、
K中間子水素原子の謎として知られていました。
K中間子水素原子の実験は、
技術的に大変難しい面が多くあり、精密な実験が難しかったので、
30年以上に渡ってこの問題は未解決であったのです。
しかし、このような2つの粒子の間の相互作用は
ハドロン物理の中でも最も基礎的なデータですが、
その部分で信じるに足るデータがないということは、大問題でした。
実験的な困難は、2つにまとめられます。
K中間子水素原子の実験はX線の精密測定を行わなければ成りませんが、
その収量が非常に小さいことと、
K中間子水素原子を生成すると最終的にK中間子と陽子が反応してしまうために、
巨大なバックグラウンドを生成してしまったためです。
この問題を解決するべく、X線検出器を標的内部に配置し、
K中間子と陽子の反応を特定して、バックグランドが小さくなるように
考えられた実験がKEKで行われました。
その結果、K中間子と陽子の相互作用は、極めて強い引力であることが分かり30年来の謎に決着をつけることが出来ました。
K中間子原子核探査実験へと研究か継続していくことになります。
一方、K中間子水素原子の研究から分かるのは、
K中間子と陽子の相互作用であって、
K中間子と中性子の相互作用(アイソスピン依存性)までは分かりません。
そこで、これを明らかにするために、イタリアのINFN研究所で、
国際共同実験DEARを推進しています。